アメリカ、コロナの4ヶ月

 「Shelter-in-Place (屋内避難)」生活に突入して、かれこれ4ヶ月が過ぎようとしている。アメリカで真っ先に発令されたカリフォルニア州サンタ・クララ・カウンティ (通称シリコンバレー) では、徐々に緩和されつつあるものの、他の地域に比べ、まだ厳しい制限が敷かれている。

 この4ヶ月ほど、自由と平等を標榜するアメリカが、いかに矛盾に満ちた国であるかが露呈したときはなかったように思う。

 世界一の経済大国であり、医学、経済学など多くのノーベル賞受賞者を輩出し、テクノロジー開発の最先端を行くアメリカ。さぞや社会基盤も整備され洗練され、どんなことにも万全の備えが整っているに違いない、と思いきや、今回のコロナウィルスにはコロリとやられてしまった。しかも、世界でダントツの感染者数!

 アメリカは日本と違って、国民皆保険ではない。いくら最先端の医療技術があっても、その恩恵を受けられる人はほんの一握り、多くの人は医療保険もなく、あっても自己負担のあまりの高さにおちおち医者にもかかれない。基礎疾患を抱えていてもまともな治療を受けられない人は多く、コロナウィルスは見事にそこをついてきた。

 自由は大事、そんなの当たり前。でも自由を履き違えている人がいかに多いことか。自由は義務とセットになってこそはじめて行使できる権利、というのを誰も教えてくれなかったのだろうか。外出自粛は人権侵害で、散髪に行くのもマスクをしないのも憲法上の権利とな。その前に、自分がウィルスにかかったら医療関係者の負担も増大し、他の人に移すかもしれない、だったらちょっとは我慢しようか、なんてことには思考が行かない愚かな人たちの存在を、コロナウィルスが丸出しにした。

 平等の国だと謳いながら、人種差別は根強く、少数派と呼ばれる人々や移民 (合法・不法含め)が安い賃金で重労働の仕事をする羽目になっている。そんな人たちのおかげで、食料や生活物資の流通、医療、介護現場といった生活基盤が保たれていることに、コロナウィルスが気づかせてくれた。また、そんな人たちこそコロナウィルスの脅威にさらされていることも。

 誰だってウィルスが蔓延している中で働くのは嫌だ。でも、1ヶ月分の生活費さえ蓄えのない人たちがあまりにも多くいる。小さなお店は常に火の車。今日の収入がないと明日もわからない状況では1日も休めない、1日もお店を閉めるわけにはいかない。一部の億万長者が天文学的な資産を所有し、貧富の差は広がる一方、お金にしか価値を見出せない国、いったい何をもって経済大国と呼ぶのかさっぱり解せない。

 他にもここに書ききれないくらい、いろんなことが頭に渦巻いていた矢先、ドカーンときた。白人警察官による黒人市民の暴行殺害。それからの展開には目も当てられなかった。コロナも吹っ飛ばす大事件が起きるなんて絶句するばかり。またもや、人の醜さがさらけ出され、自国の軍隊を同胞制圧に駆り出す話が出たこと自体、もう末期的症状としか思えない。。。

 アメリカはこのまま荒んだ社会に成り果てて行くのか。いや、今は膿を出し切る転換期で、これを機によりよい社会に向かって行くと信じたい。次の世代の人たちにこんな社会は残したくない。今、アメリカ、めちゃくちゃカッコ悪い。。。いや、本当はカッコいいふりをするのが上手かっただけのこと。

 でも、人が厳しい選択を迫られる状況が続く中、本当の意味で良識のある人々がたくさんいることもこの目で見てきた。これからは多くの人にとっていい方向に向かうことを信じたい。いや、真の意味でカッコいい国になることを固く信じているし、自分もできることをやらなければと思う。